プロローグ


高知県西部の片田舎。
トラップ射面一面のみの小さな射撃場で、
こたつMkU(しぶちょー)
は、苦闘を続けていた。

西暦2004年6月。
天気予報が台風6号の接近を告げる、梅雨のある日。
射台に立ち込める南国特有の高い湿度と、自ら流す冷や汗で、
眼鏡のレンズが見る間に曇.る。

こたつMkU(しぶちょー)の裸眼視力は0.1以下だった。
視力検査表の一番上にある、でかいの記号。
あれがまるで判別出来ない。
眼鏡による矯正視力、右0.4左0.5。
これ以上の数値を求めると、視界が歪み、
ものの1分で目眩と頭痛が襲って来る。

旧SKBの銃床をやや低めに肩付けした。
顔を前に倒す。
いつものように、鼻からずり落ちる眼鏡のフレームが視界を覆う。
そう。いつものことさ、と達観し、コール。
灰色の雨に紛れ、高速で飛翔するクレーピジョンを追うのは、
もっぱら勘だけが頼りだ。

ぱふっぱふっ。
今日もまた、無情のラッパを幾度も鳴らして、ラウンドが終了した。
スコアは……。
スコアは自主規制。

『…だめだ』
こたつMkU(しぶちょー)は、悄然と呟いた。
『これでは…。このままでは世界を相手に戦えない』

眼鏡歴30年。筋金入りのど近眼四十路おやじが
未知なる可能性LASIK(レーシック)に挑む。
これは、その、壮絶な戦いの記録である。
                            (プロジェクトえぇっくす!)

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